東京地方裁判所 昭和50年(ワ)70746号 判決
一 当事者
原告 平野正男
訴訟代理人弁護士 橋本三郎
被告 日本試験検査株式会社
代表者代表取締役 山崎清市
訴訟代理人弁護士 林勝彦
山本隆夫
二 主文
1 本件訴を却下する。
2 訴訟費用を原告の負担とする。
三 事実
(一) 求めた裁判
原告(請求趣旨)「被告は原告に対して四六〇万円とこれに対する昭和四二年一月二六日から支払ずみまでの年六分の割合の金員を支払え」との判決
被告請求棄却の判決
(二) 請求原因
1(1) 原告は被告会社と同商号で本店所在地東京都中央区入船町一丁目一三番地の訴外日本試験検査株式会社(以下訴外会社という)振出の別紙手形目録記載の約束手形一通を所持し、その支払期日に支払場所に呈示したが支払を拒絶された。
(2) そこで原告は昭和四五年七月六日訴外会社を相手方として右約束手形金の支払を求める訴訟を提起し(東京地方裁判所昭和四五年(ワ)七〇、六〇六号事件)同年九月一七日口頭弁論終結、同月二九日に右訴外会社は原告に右手形金額四六〇万円とこれに対する満期の翌日である同四二年一月二六日から支払ずみまでの年六分の割合の法定利息の支払を命ずる原告全部勝訴の判決の言渡があり、同判決は同年一〇月二一日確定した。
2(1) 右訴外会社は戸羽一男を代表者代表取締役とし、昭和三一年三月八日前記本店所在地に設立され、その後同四四年七月一〇日本店所在地を同都町田市鶴川五丁目四番地六の四〇八に移転し(登記は同年八月二日)、またそれとは別に同都中央区日本橋茅場町一丁目一八番に支店をもっていたが、同四五年九月二五日同支店を廃止した(登記は同月二九日)。
(2) ところが被告会社は右訴外会社と同じ戸羽一男を代表者代表取締役とし、その本店を同都新宿区大京町三一番地に置き、当初はその商号を第三広告株式会社として同四二年二月一五日設立され、同四五年九月二日その商号を現在の日本試験検査株式会社に変更し(登記は同年一〇月六日)、同年九月三〇日その本店を訴外会社の廃止された支店のあった同都中央区日本橋茅場町一丁目一八番地に移転した(登記は同年一〇月一二日)。
(3) また訴外会社は当初の資本金は一〇〇万円で、同四四年九月五日これを三〇〇万円に増資し(登記は同月八日)、その営業目的は理化学機械による各種試験検査の設計・施行、各種試験検査の技術コンサルタント、各種放射線の安全管理および測定、特殊写真の撮影・焼付・引伸、各種建築資材の試験検査、前各号に付帯する一切の事業であるところ、被告会社もその資本金は一〇〇万円であり、その営業目的も訴外会社とまったく同様であるほか公害に関する調査ならびに検査が付加されているのみである。
(4) さらに訴外会社は本件手形を不渡にした昭和四二年頃にはその本店所在地である中央区入船町一丁目一三番地ではまったく営業をおこなっておらず、またその後移転した町田市鶴川五丁目四番六の四〇八も戸羽一男の住所であるのみであって、設備もなく営業をなした形跡もない。そして戸羽は同四四年末頃には中央区日本橋茅場町一丁目一八番地で営業をしていたが、同所は前記のとおり同四五年九月二九日までは訴外会社の支店所在地であり翌九月三〇日からは被告会社の本店所在地となっている。
3 以上の事実からも明らかなように
(1) 被告会社は訴外会社が本件手形を不渡り(昭和四二年一月二五日)として倒産した後、その債務を免がれるために形式的に設立(同年二月一五日)されたに過ぎず、その実質は訴外会社と同一会社である。
(2) かりにそうでないとしても被告会社は同四五年九月三〇日訴外会社の営業の全部を承継し、かつその商号をも続用しているものである。
4 したがって、被告会社は原告に対し請求趣旨のとおり本件手形金と法定利息の支払義務がある。
〔認否〕請求原因1、2(1)~(3)いずれも認める。ただし同2(2)、(3)につき被告会社の設立当初の代表者代表取締役は大森助蔵であり、その営業目的は広告宣伝、印刷出版、不動産管理、工業薬品類の販売、土木建築の設計施行等であった。また昭和五一年七月一七日以降の代表者代表取締役は山崎秀夫である、同2(4)不知、同3否認、同4争う。
(三) 証拠≪省略≫
四 理由
(一)1 請求原因1、2(1)~(3)の各事実は当事者間に争いがない。
2 ≪証拠省略≫によれば被告会社が第三広告株式会社なる商号を用いていた当時その代表者代表取締役は昭和四三年二月一四日までは大森助蔵であって、戸羽一男はたんなる取締役に過ぎず(ただし各その退任登記は同四五年一〇月六日なされた)、またその営業目的も広告、宣伝、印刷、出版、不動産の管理・賃貸・販売およびあっ旋、工業薬品類の販売、食料・飼料の販売、建設機械類の賃貸および販売、土木建築の設計・施行、前各号に付帯する一切の事業であり、右戸羽が代表者代表取締役となった同四五年九月三〇日(登記は同年一〇月六日)にその営業目的も原告主張のとおりとなったこと、また≪証拠省略≫によれば被告会社の代表者代表取締役は同五一年七月一七日以降は山崎清市である(登記は同年八月二三日)との各事実を認めることができ、さらに請求原因2(4)の各事実は≪証拠省略≫から認めることができる。
(二)1 ところで以上の各事実からすれば、訴外会社は少くとも昭和四五年九月二五日まではその支店所在地であった東京都中央区日本橋茅場町一丁目一八番地でその目的に従った営業を継続してきていたものと推認され、同四二年二月一五日設立された被告会社はその当時その代表者、営業目的、本店所在地をも異にし、訴外会社とは法人格の別個の存在であったものと認められるところ、同四五年九月二五日訴外会社が右支店を廃止したとともに右訴外会社の営業もまた廃止されたものとみうるところ、その後被告会社が同月三〇日同所に本店を移すとともに訴外会社の代表者であった戸羽一男が被告会社の代表者代表取締役となり、その営業目的(公害に関する調査・検査の項目の付加は両者の営業目的の同一性を害するほどのものとも認めえない)を同一のものに変更し、またその頃商号も訴外会社と同一のものを使用するに至ってからは、被告会社は以後訴外会社の全営業の譲渡をうけこれを承継して営業を継続し始めたものと認めるのが相当である。
2 したがって請求原因3(1)の事実は認めえないが、同(2)の事実を認めることができ、被告会社は商法二六条により原告に対し本件手形金を支払う義務がある。
3 しかしながら、本件手形金請求についてはすでに訴外会社を相手方として昭和四五年九月一七日をもって既判力をもつ確定判決が存在するところであって、その効力は右訴外会社から本件手形金債務をも含めてその全営業の譲渡をうけた被告会社にも確定判決の存する債務の承継人として当然拘束力をもつものであるから、原告は右債務名義による満足をうるには右承継の事実を証明して民訴法五一九条による承継執行文をうけるか、、またその証明のできないときは同法五二一条による執行文付与の訴によるべきものと解するのが相当であり、これとは別に原告に対し右判決に表示された請求権がさらに再度の時効の進行等により失権を来たすのを妨げるなど特段に再度の判決をなさなければならない訴の利益を認めるには至っていない。
(三) そうすれば原告の本件訴はその利益を欠くものとして不適法といわなければならず、したがって却下することにする。
他に民訴法八九条を適用
(裁判官 福島重雄)
<以下省略>